※私が主宰する「政経文化フォーラム」において、去る2024年11月28日(木)に行った講演の要約を掲載しています。

 ビルダーバーグ会議は、非公式会議にも関わらず世界のリーダーが集まる。開催場所と主要参加者はある程度わかるのだが、何を話し合われたかが一切表に出てこない。ただ、今回は少し表に出てきた。AIや生物学の変化、気候変動、ウクライナ戦争、中東戦争などがテーマだったようだ。

 AIは、産業革命と言ってもいいくらいインパクトのある技術である。台湾で毎年6月にコンピュータの国際見本市が開催されるが、その2日前に今やAIのリーディングカンパニーであるエヌビディアの創業者・黄仁勲(ジェンスン・ファン)が台湾大学で講演をした。インテルをはじめ、世界のIT企業の経営者など、3,000人の聴衆が集まった。そこで彼は「エヌビディアがここまで成長したのは台湾のおかげです」と、台湾の存在なくしてエヌビディアの発展はなかったと話したのである。エヌビディアは今や時価総額450兆円。彼の資産は15兆円と言われている。「台湾はこれからAIの島になる。AIを発展させるためにこれほど恵まれた所はない。」と彼は言う。まずは技術が集積していること、人材を育成していること、政府が全面的なバックアップをしていること、アジアの中心的な所に位置していること、台湾の北から南まで1日もかからずに移動できること、色々なことを勘案してAIの島になるのだという。エヌビディアの半導体を引き受けているのは、TSMCをはじめ、43社にのぼる台湾の企業であり、これらに支えられてエヌビディアの将来があるとも言っている。

 台湾は私にとって「第2のふるさと」のような地域だが、これだけ世界をリードする技術が集積していれば、外国から攻撃されるようなことはないだろう。以前にもお話したが、中国財政がどんどん悪化しており、色々な事件が起きている。中国共産党の支配はそう長くは続かないだろうと思う。習近平体制への批判がこれから出てくると思う。今は軍部の引き締めに一生懸命だが、軍部も言うことを聞かなくなるときが出てくるであろう。そういうことを考えると、日本はもっと毅然としていた方がいい。これから覇権国の覇権争いが始まるし、まさにグローバリズムとナショナリズムのぶつかり合いが起きる。そのなかで日本は右往左往しないことが大事だ。とにかく国内をまず安定させること。それには中間層をもう一度豊かにしていくことが重要だ。家計を豊かにし、個人消費を大きくして、日本経済を成長軌道に乗せていく。私は「財務省が日本を滅ぼす」と言い続けているが、財務省の論理に巻かれたら日本の将来はない。それを乗り越える政治の力が今ほど必要な時はない。

 そして、エネルギーの自給力を強めるとともに、食の安全を取り戻していく為には、食糧の自給率を上げていくことが大事だ。とにかく安全な食物が安心して家庭に届いていくような仕組みを再構築していかなくてはいけない。そして、いずれは日本の時代が来るということを、皆が信じることである。八百万の神を信じて、自然と調和して生きるという日本本来の共助・共生の理念があるわけだから、その理念が世界を救うのだということを信じて右往左往せず、国内のことに集中してまさに「ジャパン・ファースト」で行こうではないかと呼びかけていく時ではないかと思う。(了)