※私が主宰する「政経文化フォーラム」において、去る2025年5月27日(火)に行った講演の要約を掲載しています。
かつて2009年にロシアのプーチン大統領がビルダーバーグ会議に招かれたことがあるが、彼はそれ以来、一切参加していない。日本が1960年代後半から70年代にかけて大きな経済力を持つようになってきた時に、ボードメンバーのロックフェラーがオランダの王室に「そろそろ日本からも1人くらいメンバーに入れておいた方がよいのではないか」と打診したら、アジア人は入れないと断られた。そこで、デビッド・ロックフェラーが主導してビルダーバーグ会議を補完する集まりとして1973年に設立されたのが日・米・欧委員会(三極委員会)である。
また、ビルダーバーグ会議の歴代の議長の顔ぶれを見ると、アメリカ人を議長にはしていない。プリンスベルハルトが1954年~1975年まで21年間議長を務めた。ロッキード事件に巻き込まれたので責任を取って辞めたが、その後、イギリスの元首相ダグラス・ヒューム、西ドイツの元大統領ヴァルター・シェール、イギリスのエリック・ロール、同じくピーター・キャリントン男爵、ベルギーのエティエンヌ・ダヴィニオン子爵、そして2012年から現在に至るまでフランスのアンリ・ドゥ・キャスト―ル元AXA会長兼最高経営責任者が議長を務めている。
王立国際問題研究所はアメリカの外交評議会を作る時に、永久にイギリスの政策にアメリカを従わせるという目的で作った。彼らにしてみれば、アメリカを植民地のようにしか見ていないということだと思う。金融と外交安全保障政策の2つを握っているのだから、やはり彼らの力は絶大である。トランプ氏からすれば、結局そういう連中にアメリカがいわば乗っ取られているわけで、彼は初めて「ディープステート」という言葉を使った。国民から何の支持も受けたわけではない連中がアメリカを私物化して勝手なことをやっている、それをやっつけないと本来のアメリカは取り戻せないというのがトランプ氏の基本的なスタンスである。
最近、「イギリス守旧派」という言葉が時々新聞紙上に出てくる。では、イギリス守旧派とは何なのか、誰も表では説明しない。このイギリス守旧派が今申し上げた「隠れた大きな勢力」なのである。イギリス、ヨーロッパの王室を巻き込んだ大きな勢力が、何を目指しているのかというと国境をなくすこと。いわゆるワンワールド、世界統一政府を作ることである。だからEUを作った延長として、世界統一の政府を作ろうと、世界の無国籍企業と一体となって進めようとしている。いま無国籍大企業が増えてきている。GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)もそうだが、無国籍大企業は、国がなくても自分達の企業が国際市場の中で大きな利益を得て存在感を示せればよいという考えだから、国境はない方がよい。そういう流れを意図的に作り出そうとしている。
そこで何をやっているかというと、タックス・ヘイブン(租税回避地)にお金を貯め込むことである。いくら儲けても税金はどの国にも納めない。税金を納めなくても済むような地域が世界にはいくつもある。有名なのは英領カリブにあるケイマン諸島、バージン諸島、パナマ、それからイギリスの王室が直接持っているガンジー島とジャージー島など。そういう地域は税金を納めなくてよいというだけではなく、法人の登記をした時に登記上の名称と代表者で認められる。したがって、本当の持ち主は誰なのかを表に出す必要がない。だから他人の会社や個人名を使って登記できる。この為、世界のテロ資金や犯罪資金であるとか得体の知れないお金が租税回避地に流れ込んできているのである。
それを何とかしなくてはいけない。そういう連中がますます富を蓄えて、世界を支配しようという野望を持っている。トランプ氏はその勢力と戦っているのだから容易なことではない。それと同じ考えを持っているのがプーチン氏である。プーチン氏は「全体主義には反対だ。世界統一政府やディープステートには反対だ」と公言している。トランプ氏とプーチン氏は共通の敵があるわけで、だから水面下でお互いに話ができる環境にある。(続く)