※私が主宰する「政経文化フォーラム」において、去る2025年5月27日(火)に行った講演の要約を掲載しています。

 1910年にジョージア州のジキル島にあったモルガンの別荘に、ポール・ウォーバーグをはじめとする10人の金融資本家が秘密裡に集って、FRBを作るための戦略を決めた。

 通貨の発行権を得るには、そのための法律を作らなくてはいけない。その法律を作るためには傀儡の大統領(ウッドロウ・ウィルソン)を作る必要があった。当時、現職である共和党のタフト大統領の人気があったので、ウッドロウ・ウィルソンではとても勝負にならない。そこで、大統領を経験し国民的な人気があったセオドア・ルーズベルトにお金を出して共和党を分断し、金融資本家が相談しながら民主党のウィルソンを大統領にしたのである。

 そして1913年にクリスマス休暇で多くの議員が郷里に帰っている時に緊急召集した議会において、必要最低限の議員によって「オーウェン・グラス法」を成立させ、これに基づいて連邦準備制度が作られたのである。その連邦準備銀行が通貨の発行権を握っているわけだから、いくらでも通貨を発行できる。ただし、最初は金とリンクしていたので、金の保有量以上は通貨を発行できなかった。そうすると世界支配が思うようにいかないので、そこで1971年に行ったのがニクソンショック、金とドルの交換停止である。それ以降、ドルはペーパーマネーになっているので金の保有量に関係なく印刷することができる。それを世界にばら撒いてアメリカの様々な外交政策を実行してきたのである。

 連邦準備銀行は全米12ヶ所(ニューヨーク、ボストン、フィラデルフィア、クリープランド、リッチモンド、アトランタ、シカゴ、セントルイス、ミネアポリス、カンザスシティ、ダラス、サンフランシスコ)にある。その連邦準備銀行を束ねているのがFRB(連邦準備制度理事会)で、議長は大統領によって任命される。しかし、大統領は任命はできるが、日本と同じようにFRBが「金融の独立性」を主張するものだから、なかなか辞めさせるのは難しい。いまトランプ大統領とパウエル議長の激しいやり取りが続いているのはご承知の通りである。

 そのFRBの議長を遡ってみると、ポール・ボルカ―、アラン・グリーンスパン、ベン・バーナンキ、ジャネット・イエレン、そして現在のジェローム・パウエルと、すべてユダヤ人である。彼らは金融の天才だから致し方ないのだろう。

 更に忘れてならないのは、CFR(外交問題評議会)を作ったことである。第一次世界大戦の後に、イギリスを中心とした欧州各国とアメリカが相談して、平和維持に向けてのシンクタンクを作る必要があると合意し、1919年に王立国際問題研究所(通称チャタムハウス)が設立された。同時にアメリカにも姉妹機関を作ることになっていたが、それが遅れ、2年後の1921年にアメリカの外交評議会が作られた。アメリカの外交評議会なのだからアメリカで創立総会を行うのが当然だが、なぜかパリで行われたのである。創立総会のメンバーを見てみると、ジョン・D・ロックフェラー、JPモルガン、ジェイコブ・シフ、ポール・ウォーバーグ、バーナード・バルーク、アヴェレル・ハリマン、ジョン・フォスター・ダレス、アレン・ダレス等々、いわば国際金融の代表者が集まった。

 最初はモルガンが財政的な負担をしていたが、アメリカに本部を移した後はロックフェラーがずっと財政支援をしている。CFRはアメリカの「影の政府」と言われていて、デビッド・ロックフェラーがある時に「CFRの存在を20年間一切表に出さないでくれたことに対してメディアに感謝する」と言っていたことがある。

 もう一つ注意しておきたいのが、ビルダーバーグ会議である。王立国際問題研究所などの意を受けて、1954年、オランダのユリアナ女王のご主人のプリンスベルンハルトとヨーロッパ統一の運動家・ジョセフ・レティンガーが主導して設立した。最初の会議がオランダのオーステルベルグにあるビルダーバーグホテルで行われたので、通称ビルダーバーグ会議と呼ばれている。日本では何も報道されないが、ヨーロッパを中心に毎年1回行われているのである。 メンバーはヨーロッパ各国の王室、王族、貴族、多国籍企業のトップ、国際金融資本のオーナー、国際機関の責任者など130人くらい。そこで何が話されたのか、一切公になっていない。昨年5月にはスペインのマドリッドで行われているが、その時にはAIの現状と将来、生物多様性の問題、ウクライナ戦争、中東問題、更には地政学的な捉え方でヨーロッパ、アメリカがどうなっていくのかを含めて、核心に触れた話をしているが、具体的な中身は表に漏れてこないのでわからない。(続く)