※私が主宰する「政経文化フォーラム」において、去る2024年5月30日(木)に行った講演の要約を掲載しています。

 今、世界を見ていると、トランプ前米大統領がディープステートと言うように、表からだけではわからず、裏で糸を引いている恐ろしい連中がいるということだが、この仕掛けは今に始まったことではない。世界の動きを見渡す時に、ユダヤ民族の歴史を正しく見ていかないと、今の世界情勢はわからない。ウクライナ情勢もそうだし、イスラエルとハマスの戦いについても同様である。

 戦前、日本は軍も政府も各財閥もユダヤ研究を熱心に行っていた。したがって、ユダヤ問題について理解をしている人が多かったのだが、戦後はナチスドイツの行った残虐行為がヨーロッパ社会でもトラウマのようになって、ユダヤ問題に言及することはいけないことのようになってしまい、日本も全くユダヤ問題について勉強をしなくなってしまった。

 世界をご覧になる上で一番注意をしておいていただきたいのは、ユダヤ民族といっても一枚岩ではないということである。今、世界を動かしているユダヤ人は、もともとイスラエルの地に生まれ育ったユダヤ人とは異なる。イスラエルの地では、パレスチナの人もアラブの人もユダヤの人も太古の頃から共存していた。そこに第二次大戦後、強引にイスラエルという国を作ったわけだから、どうしても無理がある。建国をしたのはどういう人物かというと、もともとイスラエルにいた12支族の末裔の人達ではなく、13番目の支族とも言われている人達であり、今のウクライナを見る上でもそのことを理解しておかなくてはいけない。

 7世紀から10世紀にかけて、カスピ海の北側から黒海に至る、いわゆるコーカサス地方で栄えた遊牧民族、騎馬民族としてハザール人が存在し、ハザール帝国を作っていた。隣のモンゴル帝国と同じように騎馬民族、遊牧民族というのは機動的に動く民族であり、好戦的で自分達の勢力範囲を広げようという持って生まれた習性がある。そのハザール帝国が全盛の頃、現在のウクライナの基となるキエフ=ルーシ大公国をヴァリャーグ人が建国し、その人達と絶えず争っていたのである。

 9世紀頃のことだが、ハザール帝国のリーダー達が一斉にユダヤ教に改宗した。この人達をハザール・ユダヤとかアシュケナージ・ユダヤと呼んでいる。その人達が結局、キエフ=ルーシ大公国に滅ぼされて、ロシアをはじめ東欧各国に離散するのである。その中で特に大きな存在になったのがフランクフルト・ユダヤである。フランクフルトが当時プロイセン、プロシアの時代にフランクフルト・ユダヤ人のゲットーと言われる居住地に一緒に住んでいたファミリーが世界に散って、今や世界を動かしている。その筆頭がロスチャイルド。そして日露戦争の時に多額の国債を引き受けて日本に協力したジェイコブ・シフである。この2人は兄弟のようなもので、同じ屋敷の中を二つに分けて暮らしていた。そのすぐ近くには、バーナード・バルーク、ポール・ウォーバーグ、オットー・カーンなどが皆同じ居住地にいた。その中心のロスチャイルドが当時のフランクフルトのヴィルヘルム公の王室の財産を管理する仕事を手に入れて、それを元にして金融業に入っていくのである。

 ロスチャイルドには5人の息子がいたが、それぞれ違う国に送った。長男(アムシェル)はフランクフルトに残す。次男(ザロモン)はオーストラリアのウィーン、三男(ネイサン)はイギリスのロンドン、四男(カール)はイタリアのナポリ、五男(ジェームス)はフランスのパリに送った。その連中が連携をして、大きな財力を手に入れた。特に、イギリスに行ったネイサン・ロスチャイルドは「株式投資の天才」と言われた人である。ナポレオン戦争を契機にして莫大なお金を儲け、気がついてみたらヨーロッパ一の金持ちになっていたのである。

 そのロスチャイルドが中心となってイギリスの王室と組んで1919年に王立国際問題研究所(通称チャタムハウス)を作った。第一次世界大戦後の新しい世界秩序を作るために、欧米が相談して研究所を発足させたのである。同時にアメリカにも姉妹組織を作ることになっていたが、それが遅れ、2年後の1921年にアメリカの外交評議会が設立された。その外交評議会が今やアメリカの「影の政府」と言われている。歴代の大統領が誰であってもそこに必ず人を送り込んでいる。その連中がまた政権から帰ってきてウォール街で活躍する。(続く)